第一章キラのこと

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「いったいな、何すんの!」 叩かれたお返しに 今度はこっちから キラの鞄をドンッと押す。 「ハルがぼーっとしてるからだろ! なにイライラしてんだ? あー、アレダロアレ!」 「……あれ??」 「セーリ整頓?」 「!?」 明らかに最初を強調して言うキラに かあっと顔が熱を持つ。 「っ、最低!!」 「あーでもハルはなぁ~ 女じゃねぇからなぁ~」 「誰が男女だって!?誰が!!」 「んなこと言ってねぇ~!!」 「言ってるのと同じじゃんバカ!!」 ほら、キラといるといつもこうだ。 喧嘩腰になるっていうか。 キラが私ばかりからかってくるからつい ムキになる。 まだパリッとした新しい制服。 中学に入学したての私達。 小学生の頃は、キラと同じように ズボンを穿けたのに 中学になったら、コレ。 「あー、もー 私も学ランが良い! 交換してよ!!」 「あははっ、確かにお前 似合いそうだもんなぁ!」 春の風にヒラヒラ靡くセーラー服。 こんなの私に似合うはずない。 まだ慣れない制服のはずなのに。 「ていうか、キラ また背伸びた?」 「あーそうだな 面白いくらいに伸びるな! ハルは、小さくなったな?」 「なってないし!!」 小学生の頃は同じくらいだった身長も 中学になったら、ぐんぐんキラだけが大きくなって。 今じゃこうして見上げるくらい。 スラリとしたキラは、学ランだってしっかり着こなしていてどこか大人びて見える。 小学生の頃は、男とか女とか関係なく ただ仲の良い友達だったのに。 ……今じゃ少し違う。 この身長差みたいに。 綺羅は……少し遠くなった。 そう感じるのは例えば。 「あ、綺羅くんだぁ。」 「格好いいよね~!」 キラを見てコソコソと色めく女子達をみる こんな朝。 格好いい……?綺羅が? 小学生の頃周りよりチビだった綺羅に 誰もそんなこと言わなかったのに。 綺羅は、昔からどちらかといえば色素が薄く女の子みたいな顔立ちをしていて どちらかといえば「可愛い。」と言われることが多かった。 小学生の頃、綺羅はそれをとても嫌がっていて ある日女子に間違われないようにと ふわふわして柔らかな猫っ毛の髪を バッサリ坊主にしてきたこともあったっけ。 そんなこと、同じ小学校じゃない彼女達にはわからないんだろうな。
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