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「そんなあなたが同じ学部だって知った時は驚いたわ。でも、あの日あなたに出会えて私は本当に良かったと思っているの。運命だってね」 『次は渋谷ー渋谷ー』  電車のアナウンスが聞こえて私は慌てて席から立ち上がる。あなたも私の動きに合わせるように動く。 「すいません。降ります!」  人ごみをかき分けてなんとかホームに降りる。 「東京って凄い人よね。横浜も人は多かったけど人口密度が違うって感じ」  私はあなたと一緒に歩き出す。 「サークル選びに迷っていた私をダイビングのサークルに誘ってくれたのもあなただったよね。泳げないからって断った私を無理やり連れて行ってね。でも、それも今じゃ感謝してる。あのサークルはダイビングよりも飲み会が多くて無茶苦茶ばっかりやっているサークルだけど……皆ダイビングが大好きでとても優しくて面倒見がよくて素敵な人達ばかりだから」  渋谷の駅構内はまるで迷路のように複雑に見える。看板だけを頼りに歩いていく。 「特に素敵なのは千秋先輩。あなたの幼馴染の。おっとりとしているけれどとても優しい人。海に初めて潜った私に海の楽しさを教えてくれたのも千秋先輩だった。私、本当に千秋先輩が好きだったんだよ。だから、あなたと千秋先輩が一緒にいるところをみるといつも心が締め付けられるようだった。だって、あなたは千秋先輩の事が大好きだったじゃない」 「今更驚かないでよ。あなたは分かりやすいから態度にすぐ出ちゃってたんだよ。たぶん、皆も気が付いていたんじゃないかな。千秋先輩も。でも、私は分かってたんだ。その恋が叶わないって。だって千秋先輩は君の事を家族としてしか見ていなかったから。そこに恋愛感情はなかったんだから」  あなたは無言のまま私と一緒に階段を降りる。眼下にスクランブル交差点が見えてきていた。
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