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「だから。だからね。私はあなたに告白したんだよ。あなたに私を選んでほしくて。告白が成功するとは思ってなかったよ。だってあなたは千秋先輩が好きだったから。それでもよかった。告白することで私を意識してくれるなら。何度でもあなたに好きだと伝えようと思っていたから」  目の前にはスクランブル交差点があり、電車の中以上の大勢の人が並んでいた。 「ああ、思い出してくれたんだ」  あなたの顔を見て、私は呟く。信号が青に変わった。横断歩道を人の流れに流されるように歩く。 「そうだよ。今日は私があなたに初めて告白した日。そして、綾ちゃん。あなたが私は拒絶した日だよ」  交差点の真ん中でおもむろに立ち止まる。 「振られるのは別によかった。でも、綾ちゃんは私が告白した時。気持ち悪いって言ったんだよ。許せなかった。許しちゃいけなかったんだ。私が綾ちゃんを好きな気持ちはもう、私自身だったんだから。あまりに酷い裏切りだよ」  肩に下げていたボストンバックを地面に卸して中から綾ちゃんを取り出す。一瞬。誰かが息を呑んだ。  次に悲鳴とパニックが周囲に広がっていく。私は綾ちゃんを掲げて言う。 「ほら、皆が私と綾ちゃんを見てる。私達だけを見てる。世界が私達を認めた証拠だよ。当然だよね。私にとって綾ちゃんは運命そのものなんだから」  太陽の光をバックに浴びる綾ちゃんはやっぱり可愛くて愛おしかった。私より背の低い綾ちゃんに見下ろされたのは初めてかもしれないな。とふと思った。  遠くで甲高く規則的な音が聞こえてきている気がした。
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