第一章 新天地

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第一章 新天地

俺の主な仕事は空箱整理だ。部品 を取り出した空箱をまとめ、紐で縛る。 だが、俺は、縛る事ができない。紐が手にあたる感覚がどうしてもあの日の事を思い出してしまい、手に力が入らないのだ。深呼吸をし、心を殺しようやく縛る事ができる。 チャイムが鳴った。休憩の合図だ。そうそうに切り上げ、喫煙所でタバコをふかしていると、同じ仕事をしている、大林が話しかけてきた。この男、子どもはおらず、昨年、妻とも死に別れ、独り身らしい。 「おぅ!田村。今度の親睦会のどうするか決めたか?」 週末の連休を利用し、山頂にある保養所での部署旅行の話だ。勿論、欠席のつもりではあったが、まだ返事は出していなかった。 「いえ…。まだ」 「なんか予定あるのか?」 「特には…。」 行く気が無いことはすぐに感じ取れたのだろう。幹事の大林は畳み込んできた。 「なら、出席だな!!ついでにお前の歓迎会もやろうって話もでてんだ。主賓だからな!強制参加だぞ」 大林はがっははと笑いながらそれだけいい、さっていった。 「ちょっ!待ってください!俺は…!」 (俺は、そんなイベント事に出席する資格は…。) そんな声は届かなかった。
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