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(──でも違った……私、強くない。超弱い、痛みにめっちゃ弱いぃぃぃ……)
グズグズと涙目になりながら、私は部屋の姿見に映る痣だらけの自分の身体を見つめた。
私の属する伝統派空手は、突きも蹴りも全て相手の身体に触れる寸前で引く、いわゆる”寸止め”が基本的なルール。
とは言え、技のキレ、形、気迫が伴わなければポイントにはならないので実際にはけっこう当たる。ガスガス当たる、とことん当たる! ……そういうモノだ。
(……腫れてる。肩……鎖骨、ああ腰骨の所も。今日の道場交流戦の相手、ずいぶん荒かったもんね。反則スレスレ)
これも数日後には沈色して無惨な青あざになるだろう。女の子のカラダが斑な小鹿模様なんて切なすぎる。
「もう組み手はイヤあぁぁ。勝つには勝ったけど、こんなに当たっ……、痛ったああああ!」
指先で痣にちょっと触れただけでこの痛さ。身体中が絶望感に引き絞られて、髪まで逆立つよう。
「このままじゃ女の子なのにオデコの辺りからハゲあがっちゃうよ……」
私は痛みというものに極端に弱い。
ささくれが切れただけでも泣きそうになるし、足の小指をタンスの角にぶつけた時はあまりの痛さに一日寝込んだ。
ましてや他の子みたいに自分で耳にピアスの穴を開けるなんて、考えただけでも貧血になる。
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