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(それなのに、なんで叩かれるのが当たり前の格闘技なんて。やっぱりウチが空手道場なんてやってるからいけないんだ)
でもそんな文句、師範のおじいちゃんにはとても言えない。孫の私が道場を継ぐのを楽しみにしているのだから。
部屋の窓から見える我が家の道場は、小さいけれどそこそこ歴史のあるものらしい。それに向かって小さなため息を吐き、私はパジャマをそうっ……と着なおした。
(グズったら少し気が済んだ。寝よう)
痛い思いもするし稽古は厳しいけれど、空手を辞めたいと思った事は一度もない。
集中できた時の心の凪、形が綺麗に決まった時の爽快感、道着の高い衣擦れの音、自分の身体が風を切る感覚。
これら全てがやっぱり私は好きなのだろう。
(でも……)
ベッドに沈み込み、いつも一緒に寝ているクマのぬいぐるみ型抱き枕にギュッとしがみつく。
クマのくせに私と同じ小鹿柄。シュールでキュートなお気に入りのコだ。
(私だって空手をしてない時は普通の女の子ですよーだ……)
こういった可愛い雑貨は大好きだし、おしゃれにだってちょっぴり興味はある……けれど。
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