65人が本棚に入れています
本棚に追加
朝は好き。
まだ半分眠っているような身体が、徐々に覚醒していく感じがとても好き。
軽いランニングをこなし、道場で基本動作といくつかの形をおさらいする。それは小さい頃から欠かした事のない、毎朝のルーティーンだ。
(でもやっぱりあちこち痛い。……凹む)
いくら鍛えても痛覚というモノは無くならない。そんな当たり前のことに軽く絶望したりして。
朝稽古を終えてシャワーを浴びて、朝ご飯を食べてもどうにもアンニュイ。なんとなくだけど、ザワザワとおかしな胸騒ぎがして落ち着かない。
もしかして私、新しく始まった高校生活に少なからず緊張してるとか?
(まさかね。だって地元の高校にしたから、中学ん時の知ってる子ばっかだったし)
ぶつぶつと自問自答しながら家の玄関を出ると、門の前で見知った顔の男の子が自転車に乗って待っていた。
「花ちゃん、おはぽよー。昨日は試合、お疲れ様」
「ん……おはぽよ、杏介」
にゃぱっと小動物のように可愛く笑うのは、幼なじみの内海 杏介。
髪も目の色も少し茶色くて小さい頃からふんわりした印象の美少年だったけれど、それは高校生になった今も変わらない。
最初のコメントを投稿しよう!