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挨拶もそこそこに、これから3ヶ月、寝起きをする離れの建屋に連れて行ってくれた。
「ほんと、ありがたいわよ。この時期にアルバイトに来てくれて」
母屋から木々を抜けた場所に平屋造りの離れが見えてきた。
「狭いとこなんだけど、ここを3人で使ってね。」
離れには個別の部屋が3つ、そして台所、食堂、風呂、トイレ、洗面所が揃っていた。狭いどころか、一つの家族が十分暮らせる広さだった。
「残りの二人はまだ畑なんだけど、夕方には帰ってくるから」
「既にアルバイトをされているお二人はどんな方なんですか?」
私は、これから同居する二人がどうしても気になった。
「二人とも、男性よ。あら残念だったかしら」
いやいや、とオバさんの冗談を否定して追加の情報を待つ。
「一人は『まっとうさん』って呼んでるの。とにかく真面目な人、嘘もつかないし、いい加減なところを見たことがないわ。一人旅の途中でブラブラ歩いてるところをうちのダンナさんが声を掛けて、そのままアルバイトで働いてもらってるのよ。もう2ヶ月にもなるかしら」
一人は問題がなさそうで少し安心した。
「もう一人の方は、どんな感じの方ですか?」
「もう一人はね、私らは陰で『宇宙人』って呼んでるの」
「宇宙人?」
「変わり者ってことよ。悪い人じゃないんだけどね。『まっとうさん』と比べちゃうのもあるんだけど、サボったり、ちょっといい加減なところがあったり、ケチで掴みどころのない人よ」
「そうなんですかー」
私の心配が顔に出たのか、オバさんが慌てて言葉を続ける。
「大丈夫、悪い人じゃないのよ。ただ『宇宙人』の変わり者ってだけ、ハ、ハ、ハ」
まだ私の顔に心配が残っているのに気付いて、更にオバさんは続けた。
「大丈夫、大丈夫。あなたと同じように応募書類をちゃんと書いて送ってきたんだもの。あんな変わり者だとは思わなかったけどね、へ、へ、へ」
実際に会わないうちからいくら心配しても仕方ないと私も諦め、オバさんの気遣いにも申し訳ないような気もしたので、私はおとなしく割り当てられた自分の部屋へ入ることにした。
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