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この日も、三人は散々に酔った。
深夜0時頃、お開きとなり各自の部屋に戻って眠りについた。
いつもはそのまま朝を迎えるのだが、いつもより多くビールを飲んだせいか、私はトイレのサインで目が覚めた。時計を見ると深夜2時半。
起き上がるのも面倒なほど酔っている自分に気付いてはいたものの、やむを得ず、布団から立ち上がる。
トイレを済ませ、『まっとうさん』の部屋の方を見ると、廊下にわずかだが光が漏れていた。近づいていくと部屋の中から『まっとうさん』らしき声が聞こえた。
隙間から部屋の中をこっそりと覗くと、何か壁に向かって『まっとうさん』が話しかけている。その壁には薄っすらと人工的な青色の光で人の姿が映し出されていた。
泥酔に近い酔いと怖いもの見たさも手伝って、しばらくその場でこっそりと部屋の中を見ていると、再び壁の映像に向かって『まっとうさん』が話し始めた。
「この星に地球人が住み始めて、かなりの時間が経ったと聞いていました。確かに文明のようなものはあります。しかし地球人のだらしなさときたらヒドイものです。なんでも正当化して平気で嘘をつく、不便や不都合があっても『仕方ない』と簡単に諦める、貨幣に異常な執着心がある」
壁に映し出された人の姿をした映像が、頷いているようにも見える。
『まっとうさん』は私に覗かれていることにも気づかず、更に続けた。
「農村部の調査は終わりました。次は都心部に移ります。それが完了すれば予定通り”ギーフ星”に帰れるんですよね。早く済ませて、とっととこの星を離れたいものです」
翌日、『まっとうさん』の姿は、離れにも、母屋からも居なくなっていた。
案外、『宇宙人』と陰口を叩かれている人物こそが地球人で、『まっとう』だと思われている人物は、実は地球以外の星から、何かしらの事情でやってきた宇宙人なのかもしれない。
もし周りに変わり者しかいないと嘆いているようなら、むしろ安心できそうだ。
なぜなら彼らこそが貴重な地球人である可能性が高いのだから。
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