M邸書斎にて

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

M邸書斎にて

「今日は特別な日だ、かあー」  モモが頬杖をゆっくりと傾け、そのまま倒れる真似をする。  おいおい、とミミはその体を支えた。 「テーマというならわかるけど、この一文から始まるっていうのは、正直、思いつかないなあ。ミミ、あんた、思いつく?」 「卒業式、プロポーズに臨む日、結婚式、思い人と死別した日、一周忌、はたまた出所日」 「あ、出産した日とか」 「やっぱり、人生の節目という感じがするよね。でも、モモの言うとおり、冒頭には持って来にくいなあー」 「今回は見送ろう」  モモがテーブルクロスを引っ張りながら身を起こしたので、今度はティーカップがソーサーごと床へ落ちそうになる。 「おっと」  考え事をするには、紅茶。疲れたらレモン。モモはふううっと息をつく。 「あっ、ねえ、聞いて。私、お話、思い付いた」  モモはいたずらっぽい目つきで、口からカップを離した。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!