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開けると中はかなり広い。
一仕事終えてから二人は車にもどると近くの公園にい
ってタバコを吸った。
自販機で買った飲み物で喉を潤しながら真夏の太陽の下で遊び回る子供達を見ていた。
「なんか夢みたいだな……夜中には殺し合いなのに」
夜中には美樹を狙う老婆--死人形と命懸けの戦いをしなくてはいけない。
しかし世界はそんな事情とはおかまいなしに平和だった。
「いや、殺し合いじゃねえよ」
哲夫が空に向かって煙りを吐きながら言う。
「相手は死なないんだからな」
哲夫の言う通りだった。
死人形は何百年も前からこの空間に漂っていて呪いが発動すると降って沸いたように現れる。
生き物のように死ぬことはない。
義之は地面に棄てたタバコを踏み潰すと大きく息を吐いた。
車でアパートにもどると哲夫は
「俺は車を返しにいってから伊藤さんと合流するまでにいろいろ準備してくるよ。考えがあるしな」
「わかった」
「あと、服は着込んでおけよ。それじゃあ危ないからな」
哲夫は義之のTシャツからでている腕を指した。
「ああ」
哲夫の運転する車を見送って部屋にもどる。
もう夕方だ。
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