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第十六話 絶望
何度倒しただろうか?
老婆の身体が砂にように崩れ落ちる。
今夜、何度も見た光景だ。
三人はまた背中合わせに集まると周囲に警戒をはらった。
『どこからくる!?』
そのとき哲夫の目の前にパラパラと天井から砂ほこりが落ちてきた。
「上だっ!!」
哲夫の声で全員が天井を見る。
見ると天井の一部が人型に盛り上がり義之達と美樹の入っている金庫の間にボトリと落ちた。
老婆は立塞がった。
まるで義之達と金庫を分断するように。
「せえのでいくぞ」
「おう」
真中に伊藤、左右に義之と哲夫というポジションで老婆と向き合った。
左からの義之の攻撃を盾で防ぎ右からの哲夫の斧は同じ斧で受けた。
がら空きの正面に伊藤が頭目掛けて鉄パイプを振り下ろしたそのとき老婆の服の左肩が裂けて腕が一本飛び出してきた。
その腕が鉄パイプをがっちりつかんだ。
三人は驚きのあまり一瞬、動きが止まる。
間髪入れずに右肩から新たな腕が飛び出す。
その腕には斧がにぎられていた。
新たな斧は無情にも伊藤の脳天目掛けて炸裂した。
老婆はゲタゲタ笑い出すとそのまま伊藤を蹴り飛ばす。
それは一瞬の出来事だった。
「伊藤さん!!」
義之と哲夫が叫ぶなか伊藤はザクロのように割れた頭部から真っ赤な血を床に広げて絶命していた。
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