第十六話 絶望

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伊藤に気を取られている義之達には目もくれずに老婆は一足飛びに金庫の前に立つと二本の腕ににぎった斧で金庫の鍵の辺りを猛烈な連激をくりだしはじめた。 「あの攻撃を止めろ!」 「おおっ!」 義之と哲夫が後ろから襲い掛かるともう一本の腕ににぎった鉄パイプを振り回してきた。 それでも隙をついて脚や背中に斧と鉄パイプを叩きこむ。 だがさっきまでとは違い老婆は義之達にかまわずひたすらに金庫を壊すことに集中した。 力もさっきまでとは段違いだ。 そしてついに金庫の扉が打ち壊された。 「キャアアアアツ!!」 美樹の悲鳴が響き渡った。 老婆は美樹を引きずりだすと床に投げ付ける。 そして斧を打ち下ろそうとしたときに背後から哲夫の一撃が老婆の首を切断した。 斧は間一髪のタイミングで義之が受け止めた。 状況が一変した。 老婆があのように姿を変えるとは考えもしなかった。 金庫がこれほど壊されるとも…… 「おいっ!!何やってるんだ!?」 突然、ライトに照らされた。 入口を見ると警察官が四人立っている。 さっきの中学生が通報でもしたのだろう。 凶器を持っている義之達に警察官は動くなと言いながら拳銃に手をかける。 伊藤の凄惨な死体を見て一人が無線を入れた。 そのとき首のない老婆が動き出した。 切り落とされた首を拾いあげると切断されたところにくっつけた。 「なんだ!?なんだこいつは!?」 恐怖の入り交じった声で警察官が義之に聞いた。 「首斬り魔!首斬り魔です!!」 美樹が言うと警察官ははっとしたように拳銃を抜いて老婆に向けた。
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