第十六話 絶望

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「動くな!!さあ、君達はさがって!!」 義之達は警察官の後ろにさがると老婆もゆっくりと歩いてくる。 「止まれ!止まらんと撃つぞ!!」 警察官の制止など聞くはずもなく老婆の歩みは止まらない。 拳銃を天井に向けて威嚇発砲する。 「義之」 後ろから美樹が声をかけてきた。 見ると斧を持っている。 何度目かの攻防のときに崩れたときのものだろう。 「これ……」 「ああ」 美樹から受け取ると代わりに持っていた鉄パイプを渡した。 「発砲しろ!」 警察官が拳銃を老婆にむけて発砲した。 しかし老婆はちょっとゆらいだだけだった。 さらに続けて発砲するが心臓や頭部に弾丸をうけても倒れなかった。 警察官は呆然としている。 「逃げるぞ!車だ!走れ!」 義之が言いながら美樹を部屋の外に出してから哲夫と走り出した。 老婆も後を追って部屋を出ようとしたときに警察官の一人が拳銃を構えて立ち塞がった。 ペンライトの明かりをたよりに廊下を走る。 「さっきの連中が呼んだのかもな」 「他にいねえよ!」 義之と哲夫のやりとりが何をさしているのか金庫の中にいた美樹にはわからない 。 三人が息を切らして入ってきた扉にたどり着いたときにはるか後方から悲鳴が聞こえた。 きっと警察官が殺されたかしたのだろう…… 「行くぞ!」 後ろに気を取られている義之と美樹を哲夫が急かした。 外に出ると空はまだ暗い。
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