125人が本棚に入れています
本棚に追加
義之と美樹は屋上の出入口までたどり着いた。
「義之……私、死にたくない!」
「大丈夫だ!俺が絶対に……命に代えても守るから!」
義之は怯える美樹の肩をつかんで強く言った。
まだ外は暗い。
だがもう少し、あと少ししのげば日の出になる。
絶対に美樹を守ると自分に言い聞かせてから義之が屋上のドアを開けたとき、目の前に老婆が立っていた。
「うわっ!」
「キャアッ!」
二人が驚きの声をあげたと同時に老婆の斧が義之の肩を砕いた。
「――!!」
義之の全身に声もでないほどの激痛が走った。
持っていた斧を床に落とす。
「に、逃げろ!」
呻くように美樹に逃げるように言う義之を老婆は無造作に壁にたたき付けた。
「あ、あ……」
美樹と老婆の間にはもはや遮るものはなかった。
「イヤァァァ!」
美樹は絶叫すると階段を駆け降りた。
無我夢中で……
真っ暗な階段を降りてから玄関のホールにくると数人の警官の死体と一緒に上半身と下半身を真っ二つにされた哲夫の死体が転がっていた。
「アアア……」
血の臭いが充満している。
恐怖でもう声もでてこない。
後ろからは足音が聞こえてくる。
美樹は出口に向かって走りだした。
開け放たれた自動ドアを抜けると車の横には老婆がいつの間にか立っている。
美樹はへたりこんだ。
もう逃げれない……
最初のコメントを投稿しよう!