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青年が見つけたそれは、卵のようだった。
水汲みに行ったいつもの河原。その木陰に見慣れない淡い光があるのを、彼は見つけた。何だろうと近寄ってみると、そこに両手の上に載るくらいの、鶏卵よりは何倍か大きい卵のようなものが、蛍のような淡く優しい光を放っていたのだ。
光る卵。
彼は今まで、そんなものを見たことも聞いたこともなかった。が、目の前のそれには生命が宿っているような気がした。卵が発する光は一定の間隔で明滅していて、それがあたかも心臓の鼓動のように思えたのだ。
そしてその生命に親のなさそうな予感も、彼にはした。卵があるのは木の根元の草の上、見上げてみても巣らしいものは見当たらない。青年が近寄っても卵を護ろうと駆け付けてくるものの姿もない。
しばし考えた末、彼は卵を持ち帰ることにした。
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