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共に暮らしすっかり打ち解けた頃になっても、青年は妖精について多くを知らないままだった。帰る場所が無いこと、家族や仲間がいないことは確認したが、それ以上を知る必要はないと思うようになっていた。
妖精は無邪気で明るく、人間の少女と同じようにあどけなく笑う。月光にほんのりと照らされて佇む姿は、まるで一枚の絵画のように美しい。――それだけでいい気がした。妖精が何者であろうと、笑い合える家族ができたことに変わりはないのだから。
青年と妖精はいつも一緒にいた。一緒に遊び、歌い、笑い、眠った。
青年は妖精に名前を与えた。
妖精は青年の孤独を癒した。
ささやかで温かな幸福の中で、季節は少しずつ、移ろいでいく。
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