青年と妖精

8/11
前へ
/11ページ
次へ
 やがて青年の想いは通じ、二人は恋人になった。  それを知った妖精は我が事のように喜んだ。その小さな胸が強く軋んだのは確かだったが、口にした祝福の言葉もまた、紛れもなく彼女の本心だった。  青年が笑ってくれるなら。たとえ自分に向けられたものではなくとも、その笑顔が長く、永く続くようにと、彼女は願った。  ――妖精のそんな切なる願いさえ、月には届かなかった。  娘が重い病に倒れたのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加