一 死後の世界

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「人間道から来る奴らに対して言えるんだが、あそこから来る大体の奴らって生前に未練タラタラ残してこっちに来ちまってるよなぁ。中には死んだ事を受け入れない奴もいるしよぉ……。それを一からここはあんたらの言う死後の世界だって説得するのが本当に面倒くさい」 「それが俺達の仕事だろ。愚痴垂れてる程に口に余裕があるんだったら、少しでもその口を仕事に役立てろ。閻魔大王にしごかれたくないだろ」 「それは勘弁だな……」 その後も、赤鬼と青鬼は歩き続ける。 だが歩いている途中、青鬼はふと疑問を抱いて足を止めた。 「……珍しいな。今回はやけに少ない……」 今2人が歩いている道……それは冥界と人間道を繋ぐ道。 本来そこは人間道で死んだ者でごった返しているはずだ。 しかし今、そこは今どこにも人が見当たらない。 長い間、何度もこの仕事をやってきた青鬼だったが、この光景は初めてだ。 「人間道、今回は誰も死ななかったんだな」 「馬鹿言え。人間道に住む生物がどれぐらいいると思ってるんだ。数字で表せられるか分からない程の数だぞ。そんなにいて、今回誰も死なないなんて有り得る訳が……。……ん?」 青鬼は遠くへ向けて目を凝らす。
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