1人が本棚に入れています
本棚に追加
大きな桜の樹の下で
今日は特別な日だ。
沢山の事が終わって、沢山の事が始まって。
私が終わって、私が始まった日。
だから今日はいつもよりずっと早起きをする。
早起きして、身支度を整えて、
それから、お弁当を作る。
お弁当に詰めるのは、全部全部彼が好きだった物。
唐揚げ、だし巻き玉子、そしてハンバーグ。
沢山、沢山作って、重箱に詰める。
「おはよー…ママー…」
暫くすると、寝惚け眼の娘が起きて来た。
「おはよう、美優(みゆう)」
「わぁっ!美味しそうなのが沢山あるっ!」
「ああ。こら、つまみ食いするな」
「えー!けちー!
パパだっていつもママのご飯つまみ食いしてたじゃない!」
「…ああ。そうだったな」
「あっ…ご、ごめん。ママ。
余計な事言っちゃった」
「…いや、気にしなくて良いよ。
ほら、早く朝ご飯を食べろ」
「はーい!」
♪
ハンバーグの種をこねていると、リリリーン、リリリーンと玄関のベルが鳴る音と、
「俺だー。柚子だー」
そんな男性の声が聞こえた。
「あっ!柚子叔父さんだっ!」
「今手が離せなくて…美優、すまない、代わりに出てくれないか?」
「はいはーいっ!」
とてとてと美優が玄関に駆け寄って行く音と、ガチャリと扉が開く音、
最初のコメントを投稿しよう!