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(人々にとって今日は“滅びの日”となるのかな)
ボンヤリ考える。昨日まで澄んだ青空は真っ赤に染まり、そこには翼の生えた“巨影共”が
縦横無尽に飛び交っていく。
地上の様子と言えば、空を指さし、呆然とする人、携帯で撮影する人、逃げ惑う人々、
人・人・人で溢れかえっている。
車に乗った者は、少しでもこの危機から遠ざかろうとスピードを上げ、
路上のあらゆる障害物、もちろん、人も含めてだが…を吹き飛ばしていった。
そんな地獄の光景の真ん中で、一人の男がじっと佇み、考えるように腕を組み、
周りを見ている。
(そんなに急いでも無駄な事なんだがな?…これは世界中“全ての場所”で起きている。
逃げ場は何処にもない。)
まるで全てを知っているように、いや実際に知っている“男”の前に巨大な影が降り立つ。小山程の大きさもある、この星で言う所の“ドラゴン”のような奴だ。怪物は悲鳴を上げる人々を見回し、大口を開ける。
真っ黒な口腔がたちまち赤くなり、灼熱の業火が放射された。人々は悲鳴を上げる間もなく
灰となり、車は轟音と共に爆発していく。
しかし、殺戮の中心に立つ男は“無傷”だ。ドラゴンは彼をじっと見つめ、少し考える仕草を見せ、
やがて“得心”が言ったというように頷き、空に現れた人間達の反撃手段“虚しき抵抗”の象徴である戦闘機群を、次の獲物に定め、飛び去っていく。取り残された男は一人心で呟く。
(こちらの立場はしっかり伝わっているようだな。まずは一安心)
彼はこの星の行く末を見守る“観察者”であり、今日は星の“浄化の日”と
決められていた…
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