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「あたし、行かない!離して。」
中年の男性の手を振りほどき、高齢の女性にしがみつく少女。若い女性と男性が
説得に入り、しがみつかれている高齢の女性も言い含めるように話すが、少女は頑として
首を振り、そこから動こうとしない。
「もう、時間がねぇ。化け物共はそこまで来てる。ババアとガキは見捨てろ!行くぞ?」
若い男性が悲鳴のように吠えるが、彼に振り向く全員の“冷たい視線”に気が付くと…
「付き合ってらんねぇよ。」
と毒づき、踵を返して走り去る。恐らく、彼はまた何処かで別の“グループ作り”に
励む事だろう。これくらいサバサバと他人を見捨てれる者が“生物”としては最後まで
生き残るタイプとなる。何度も報告書で読んだ内容を改めて復唱する気分になった。
残された女性と男性はしばらく女性と少女、主に少女を説得し
(と言ってもそんなに時間はないが)
やがて諦めたように、若い男性の消えた方向に続く。
高齢の女性は「待って」という言葉を出しかけ、悲しそうに目を伏せ、それを止めた。
嗚咽する少女をしっかり抱きしめ、
「〇〇ちゃん、ゴメンね。ゴメンね。」
を繰り返す。灰だらけの通りに少女と女性の嗚咽が虚しく響き、やがて上空から迫る怪物達の咆哮と羽音が残酷に響き渡ってきた…
目の前で繰り広げられる人間的に言うと“お決まりのパターン”をみながら、
自身がこの星の“今回の担当”になった理由を改めて考える。
男の、観察者としての仕事は何もこの星だけはでない。他の観察者と協力しながら、
あらゆる星をめぐっていく。その上で、この星に来るのが何百回目なのである。
実を言うと、ここ数十年、宇宙から見た時間的にはごく小さな、取るに足らない時間だが、
この星は“浄化の日”をキチンと終えてはいない。原因は全く不明だ。
担当した観察者達も行方がわからなくなったり“元の観察者”に戻る者が非常に少ない。
これまた人間的な表現だが、つまり言うと“転職もしくは辞職”したのだ。
それが何故なのか?
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