迎撃の日・・・

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男の仕事は、その原因を探る事も含まれている。 泣き腫らした顔を上げた少女が、こちらを見た。男は見返すが、何も声をかけない。彼女も しばらく見ていたが、やがて諦めたように顔を伏せた。男も、それに習うように目を閉じた。 ここまではいつも通りだ。特に変化はない。後数秒で、ここら一体は怪物の炎に包まれ、 全てが消滅する。生物としての意思を持った彼女達も大気中の成分と同じになり、 最後に一部が残り、再びの繁栄と発展を繰り返す。 生物が住む星の、ごく当たり前のサイクルを見ているに過ぎない。 前任者達が職務を放棄する理由には、到底ならない。だが、彼等は辞めた…何故だ? 「これを使って」 ふいに聞こえた先程の若い女性の声に思考を中断する。開けた目に飛び込んできた光景は女性が何処からか用意した車椅子を動かし、高齢の女性を乗せようとしている姿だ。 (?) 思わず頭に疑問符が出てしまう。 「すまない、担架を持ってきたが、必要なかったな。」 続けて中年の男性も現れ、自身の用意したモノを捨て、若い女性を手伝う。 (??) 頭の中で増えていく疑問は、高齢の女性を乗せ、移動を開始する車椅子の音より 更にデカい車のエンジン音で最高潮に達した。 「ワリぃ、鍵付いてる奴を探すのに時間かかった。早く荷台に載せろよ。」 大型のトラックをバックさせ、運転席から降り立った… 先程“いち早く逃げた筈の”若い男性が叫ぶ。 「何で戻ったの?」 高齢の女性と少女に、男性を乗せた若い女性が訪ねる。その響きは少し嬉しそうだ。 若い男性が照れたようにぶっきらぼうな口調で言葉を返す。 「あ~っ、あれだよ。あの世行く前に良い事一つくらいしねぇとよ。急ぐぞ。」 勿論、そんなモノはない。男は良く知っている。死ねばそれで終わりだ。 そして彼等もわかっているのだろう。  
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