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あの世の事も、トラックなんかで逃げ切れる時間はもうない事も…
あのまま逃げていれば、助かったかもしれない。若い男性も女性も中年の男性もだ。
最後には死ぬと朧気に理解しても、すがる。
どんな手段を使っても生きようとするのが、
この生物達の特徴だ。戻る理由はない。ただの自殺行為。それをわかっている筈なのに…
初めてみるパターンに、頭が混乱し、呆然とする男。そんな彼を若い男性が気づき、
慌てたように声をかけた。
「あんたも突っ立ってないで、早く乗れよ。もうヤバいぜ。」
男は頭が打たれたような衝撃を再度受ける。同時に浮かぶ言葉がある。
(自己犠牲…自己を省みず他を助ける行為)
1年の現地経験で学んだ言葉、理念の一つ。
だが、それが現実的に行われる事はまずない。そんな言葉がまかり通らない事は
よくわかっている。
それどころか災害や事件の際には“緊急避難”という
自身が助かるために、他を犠牲にしてもよい法律があるくらいだ。
ましてや、空を怪物が飛び交う、非現実、あり得ない事態…正常な人間の思考では
恐怖に怯え、自身を守る事で精一杯の筈だ。
それなのに…
(コイツ等は誰かを助けている。)
たまたま居合わせた他人のために、自ら死地に帰ってきて、挙句の果てには、
彼等に関わらなかった男を“何の見返り”がある筈もないのに助けようとしている。
前任者達は“コレ”を見たのか?それはわからない。だが、男の気持ちはもう決まっていた。いや、決められてしまったと言っていい。
(現地入りする期間を“次から短く”するべきだな。彼等の文化を学び、充分吟味した上で
コレを見せられたら、たまらない。彼等の文明をもう少し見てみたい、見守りたい気持ちが体を支配して、ど・う・に・も・な・ら・な・い!)
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