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頬が緩んでくる。若い男性が再度の声を促す。今から車を走らせても、間に合わない。 空を飛ぶ怪物は口を大きく開けているのだから…
彼にもそれが見えている。あの巨大な口から、自分達の命を奪う一撃が発せられる
というのに・・・他を最後まで気にする、その高潔と言っていい姿勢…
全く、本当にありがた迷惑な生物だ。これでは“星の浄化”など進む訳がない。
男は全身に力を込め、体の変化を促す。
「ア、アンタ…」
若い男性が驚きの声を上げる。他の人間達も同じ様子だ。巨大化した自身の体を動かし、
彼等に振り向き、頷いてみせた。
怪物達が男の行動に一瞬ポカンと動きを止める。だが、元々は狂暴な存在…
すぐに歯を剥き出しにし、こちらに襲い掛かってくる。
一番手前の敵に強力な拳をめり込ませ、男は心の中で叫ぶ。
(この世界は守るに値する)
“観察者”から“守護者”になった彼の“今日”は、仕事だけでなく、生き方すらも
変える“特別な日”となった…(終)
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