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「お待たせしました。待望のカレーです」
目の前に置かれたカレーはまさしく待望の品だった。さっきからずっとカレーのいい香りがしていたから、空腹を感じていたのだ。
「おお! 美味そうだな! いただきます」
「カレーを褒められてもあまり嬉しくないですね」
隣に座って河本さんもカレーを食べ始める。部屋に入ってきたときよりも近い距離だけど、カレーの匂いしかしないので緊張はしない。
「河本さんも今日は予定がなかったんだね」
「はい、そうですね。宮田さんを誘おうと決めてたので予定を入れなかったんですけどね。ショッピングモールも行きたかったんですけど、それよりも強烈にカレーが食べたかったんです。だから、もしショッピングモールに行ってたとしても、カレーを食べてたかもしれません」
映画が終わるまでに会話したのはこれだけだった。
「名作って、わかりやすい王道だと思ってましたけど、意外に奥が深いんですね」
「そうだな。でも、単純な楽しさもあるし、映像美もある。あの頃の時代背景を考えても、希代の名作だろうな」
なんて分かったようなことを言ってみるけれど、俺の方がこの作品を理解できてるなんて思ってはいない。それに、男性と女性で受ける印象が変わるはずだ。
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