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決して、大気圏突入自体は今の時代、何の珍しい事でもない。
普通に地上と空を行き来しているこの時代、そんな事など造作もないのだけど……。
それは……レクリエーションという形としては存在していなかった。
技術革新というものは、人が夢を追う事で生まれる。
それは未来であっても同じ事……生活基準が変わり物の創造はAI等が補助するものの、基本は人が行う事となっている。
遊びに関してもそう。
人は暇を潰す為に遊びを覚えるけど、満足させる為に生まれた遊びはそれに比べれば数少ない。
そしてそういったものは……意識しなければ生む事すらままならない。
それを当時ヨシヲ社長は生み出そうとしていた……一つの体験型遊戯、『アースダイブ』を。
「まだコイツァ試作段階で一回使えばそれっきりの代物だが……行(ゆ)く行(ゆ)くは何度でも使える様な物を作って量産して……そして多くの人が地球へ『落ちていく』体験を感じて欲しい……そう思っとる。」
「凄いなぁ……でも熱そう」
大気圏とは簡単に言えば空気のある空間と、無い空間の境目の事を示す。
空気がある場所では、一定以上の速度を出そうとすれば空気が邪魔をして体が押される様な感覚に陥る訳だけど……空気が無い空間はそういう事が殆ど無い。
いわゆる空気抵抗と呼ばれるものが無い世界では、いくらでも物の速度は加速する。
そして……地球には重力と呼ばれる、物体をその中心へと引き込む力があり、それは例え大気圏外だろうと影響する。
大気圏突入とは、地球の重力に引かれて速度が増した物体が大気圏内へと入る事で空気の層へと突入する事。
その時、空力という力の影響で、高速で落ちて来る物体が空気を強烈に押し込む事でその間に熱を持つようになる……原理は違うけど、人が両手を擦り合わせると温かくなる様な、そんなイメージ。
でもその温度は人肌なんて生易しい物じゃない。
重力に引かれて加速した物体への空力がもたらす発熱温度は数百度以上にも及ぶ……下手すれば燃えて消し飛んでしまう程に。
人間の体など、大型隕石と比べれば無いに等しい程に小さいのだ。
そんなものが何の対策も無く落ちてしまえば当然消失は免れないだろう。
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