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トラファルガー山
人っ子一人いない無人の大通りに、モルガはひとり、茫然と立ち尽くした。
帝都のメインストリートであるはずのその通りは、つい先程まで人で溢れ、ごった返していたのだが……突然、大音量で何か鳴り響いたかと思ったら、あっという間に、人々はどこかへ消えてしまった。
「な……なんじゃ一体……」
VD──ヴァイオレント・ドールの技師を目指し、帝都に住む姉の元へ、辺境の町マルーンから、はるばる上京してきたのだが……。
「何をしている! この大馬鹿者!」
突然、襟首をつかまれ、モルガは大通りから、細い路地に引きずり倒された。
何事かと視線をあげると、十七歳のモルガを引っ張り込んだその力強さからは、まったくもって想像できないほど小柄な少女が、怒りの表情でモルガを見下ろしている。
「何じゃぁ……」
「貴様、死にたいならもっと別の方法を選べ! 迷惑だ!」
はぁ……? 何が何だか解らず、困惑するモルガに、今度は少女が怪訝そうな顔を浮かべた。
と、同時、響き渡る轟音と爆音、地響きに、モルガはびくりと目を見開く。
自分が今まで立っていた大通りを、『巨大な影』が疾走してゆく。
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