50人が本棚に入れています
本棚に追加
煉瓦造りの頑丈な建物は衝撃にびくりともしないが、建物と建物の隙間──路地に突風が吹き抜け、二人は飛ばされかけた。
「ひゃー! エラトにタレイアにカリオペイア! 歴戦の名機を、着いた途端にさっそく拝めるとは! ワシゃー、ついとるのぉ!」
「……田舎者の『おのぼりさん』か」
モルガの独特の訛りに少女が小さく舌打ちしたが、当のモルガは気が付かない。
テンションがあがり、大通りの方にフラフラと戻ろうとするモルガを、少女は再び、がっちりと襟首をつかんだ。
「だから、大通りは危険だと言っている!」
とっととシェルターに避難しろ! ズルズルとモルガを引きずりながら、どこかへ向かおうとする少女に、これ以上首が絞まらないよう、襟首と首に隙間を作りながらモルガは問いかけた。
「んじゃ? わりゃー……」
「まったく……私にも出撃命令が出ているのだぞ……」
モルガの様子など気にせず、「こんなことをしている場合ではない」とでも言いたげな少女を、モルガはまじまじと観察する。
そして、あることに気が付いた。
この国──フェリンランシャオ帝国は、別名「炎の帝国」と呼ばれている。
元々古来からその国に住まう民のほとんどは、赤い瞳と、赤い髪を持つ人種。
最初のコメントを投稿しよう!