トラファルガー山

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 煉瓦造りの頑丈な建物は衝撃にびくりともしないが、建物と建物の隙間──路地に突風が吹き抜け、二人は飛ばされかけた。 「ひゃー! エラトにタレイアにカリオペイア! 歴戦の名機を、着いた途端にさっそく拝めるとは! ワシゃー、ついとるのぉ!」 「……田舎者の『おのぼりさん』か」  モルガの独特の訛りに少女が小さく舌打ちしたが、当のモルガは気が付かない。  テンションがあがり、大通りの方にフラフラと戻ろうとするモルガを、少女は再び、がっちりと襟首をつかんだ。 「だから、大通りは危険だと言っている!」  とっととシェルターに避難しろ! ズルズルとモルガを引きずりながら、どこかへ向かおうとする少女に、これ以上首が絞まらないよう、襟首と首に隙間を作りながらモルガは問いかけた。 「んじゃ? わりゃー……」 「まったく……私にも出撃命令が出ているのだぞ……」  モルガの様子など気にせず、「こんなことをしている場合ではない」とでも言いたげな少女を、モルガはまじまじと観察する。  そして、あることに気が付いた。  この国──フェリンランシャオ帝国は、別名「炎の帝国」と呼ばれている。  元々古来からその国に住まう民のほとんどは、赤い瞳と、赤い髪を持つ人種。     
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