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モルガの瞳は赤いが、髪は茶色の強いくせ毛。コレは、モルガの故郷マルーンが、かつてあった隣国トレドットとの国境沿いに位置していた町であり……先祖の中に、かつてトレドットの民がいて、混血であることを意味している。
少女──緩やかにウェーブを描き、毛先がくるくると巻いている長い髪と、気の強そうなその凛とした瞳の色は、黒。
それが、意味すること。
「おまえさん、トレドットの……?」
「……そうだ」
短く、少女が肯定した。
黒。それは、トレドットの中でも、皇族の血を引く人間の中に、「まれ」に生まれる──高貴とされる『皇族色』。
「トレドットの『最後の皇帝』、レイヴン=オブシディアンが孫。ルクレツィア=オブシディアンだ」
「こりゃー、失礼した」
引きずられながらも、慌てて、モルガは襟を正した。
「ワシゃー、モルガナイト=ヘリオドールじゃ」
「ヘリオ……ドール……?」
大通りから随分と距離をとり、直接暴風を浴びる事はなくなった故か、少女──ルクレツィアは、歩みを止めた。
「もしかして、コレか」
上着の中のホルスターから、短銃を取り出す。
黒い小型の銃で、シンプルだが、小さな装飾が施されている。
「おお! こりゃ、兄貴の!」
モルガの故郷マルーン周辺は、古くから鉱山が多く、産出される鉱物を加工する技師や細工師が多く住んでいた。
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