50人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、リイヤ・オブシディアン。遅刻した上にその部外者は、一体誰なのだね?」
白い服を身に纏い、ルクレツィアと同じ、クセの強い長い黒髪に、きつい黒の瞳の男が、無理やりルクレツィアについてきたモルガを睨みつける。
年齢は、二十歳くらい……だろうか。
「リイヤ?」
ルクレツィアは諦めたような表情で、モルガに対しては小声で短く、男に対しては簡潔に、的確に答えた。
「リイヤは私の階級名だ。……ラング・オブシディアン。彼は、ヘリオドール家の……マルーン出身の技師です」
オブシディアン……やはり、ルクレツィアの身内なのだろう。トレドットの皇族色を持つ男は、実に面白そうに、その黒い目を細めた。
「ほう、それは丁度良かった。ルクレツィア。部下に置いてきぼりにされた上に、君は致命的な方向音痴……どうしようかと思案していたが……彼に道案内してもらうといい」
男の口から放たれる嫌味の三段重ねに、思わずルクレツィアは顔をしかめ、モルガは目を丸くした。
故郷の惨事にモルガの夢云々どころの話ではなく、今すぐ帰りたい……とは、モルガも思っていたが……。
「しかし、どうやって……」
ルクレツィアは眉間にしわを寄せる。
最初のコメントを投稿しよう!