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帝都からマルーンまでの距離は遠く、モルガが使ってきた陸路では四~五日はかかってしまう。
先ほど、大通りを疾走していったVD──ヴァイオレント・ドールを使うなら、一日程度で着くとは思うが……。
「VDは、一人乗りじゃ……」
モルガの言葉に、男はうなずいた。口元にうっすら、笑みが浮かんでいる。
ヴァイオレント・ドール──通称VD。
『神の使徒』と称され、各国の「象徴」である『精霊機』。それを模し、作られた『人造の使徒』。
太古から、この世界の人間には、それぞれ「精霊の加護」がある。
精霊は大まかに七種……火(炎)、水(氷)、風(大気)、土(地)、緑(木)、光(雷)、闇(影)にそれぞれ分けられ、「例外」がいくつかあるものの、基本的には一人の人間は、どれか一つの精霊の加護を受けていた。
古来から、精霊機もVDも、その機体には、精霊が宿るという。いわば、操者を守護する、精霊の、かりそめの肉体……。
故に、操者が受ける加護の属性──相性が合わなければ、操縦することができないのだ。
「ワシゃー土属性じゃが……あんたは……?」
「私は、闇だ」
土と闇。同属性ならワンチャンスあったかもしれないが、この時点で、既に属性が喧嘩することが目に見えている。
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