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一章
二人の結婚の式典は盛大に行われた。晴天の下、妃エリーザの花嫁姿を一目見たブランニア国民は歓喜に沸く。大きな翡翠色の瞳、スッとした鼻筋、波打つ金糸の絹髪は、うっすらベールで覆われているにもかかわらず地上の天使ともてはやされた。
周囲の視線を浴びながら、エリーザ王女は広場を静々と歩く。彼女を待つ夫オスカーは、同じ翡翠色の瞳を優しく細め柔和な笑顔で彼女を迎えた。オスカーも背が高く繊細な顔立ちの美青年で、絵画から抜け出たような二人に周囲はうっとりため息をついた。
「エリーザ姫」
甘い声音がそっと彼女の頭上に降りる。
「遠い所を遥々よく来ていただきました。これから末永くよろしく」
オスカーはエリーザの顔を覆う純白のベールを壊れ物の様にそっと外した。その瞬間、民衆は揃って息を飲む。俗世にあるものとは思えぬ程、凄絶な美貌が露わになったのだ。
エリーザはオスカーを見上げると、淑やかに微笑む。その笑顔はアフロディーテの生まれ変わりだと翌日の新聞に書かれた。
オスカーはエリーザの顔を見つめてより一層優しげな顔を綻ばせ、彼女の額に唇を寄せる。それを合図に周囲の歓声がわっと沸き起こった。
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