七章

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「どちらも良いですね。どちらが良い? イライザ」 オスカーがイライザの顔を覗き込む。子供のように目が輝いているから、半分素が出ている、とは指摘しないでおいてやった。 「……貴方次第よ、オスカー」 イライザは薔薇色のほおを緩める。天使が降りて来たような可憐な微笑みが周囲を魅了した。 ハンネル王は傍らの妻と微笑みを交わし、手を繋いで馬車に乗る。二人が去った後、オスカーは妻に問いかけた。 「ハンネル王も見合い結婚だったかな?」 「そうね。でも仲は良いわよ」 「そのようだね、空気が同じだ」 慇懃(いんぎん)な態度が、煩わしい。イライザはオスカーの手を引いて促す。 「オスカー、そろそろ戻りましょうか」 「ん? そうだね」 イライザは、オスカーがニヤリと笑った事に気付かなかった。
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