異世界

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彼は正確には機械工学部の生徒で、とある研究の為に父の研究室に入り浸っていたらしい。 なんでもそこで父がいろいろした助言のお陰で授賞した、らしい。 生物模倣(バイオミメティクス) 生物の持つ能力や仕組みを人口的に再現して作られた技術や材料の事を言う。 昆虫と言うと作物を食い荒らし毒針で人間を襲う、危険な害悪というイメージを持つ人も多いかもしれない。 だが、それは昆虫と言うモノの一つの側面でしかない。 大昔から人間は昆虫を含め数多の動物たちから多くの事を学んできた。 最近のモノだと"蜘蛛の糸"が有名だろうか。 蜘蛛の糸は鉄の4倍の強度とナイロンに勝る伸縮性、そして300度を越える熱にも耐える耐熱性を備えている。 その性能は防弾チョッキに使われている特殊繊維ケブラーすらも越えている。 他にも蚊の針の形状を利用した痛みのない注射針やトンボの羽の構造を利用した風力発電の風車。 その他 数えきれないほどの先端技術が昆虫や多くの生物の能力を模倣したモノだ。 空の先へ行ける技術を生み出し、海の底を覗き見る時代になっても人類は数多(あまた)の生き物から学び続けている。 そこで父と談笑(だんしょう)している彼もまた、そんなバイオミメティクスに()せられた一人なのだ。 「おい、健太郎!」 父達の会話を横で聞いていると、急に父から声を掛けられた。
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