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「それに目的のモノは手に入ったからな、近い内に帰る予定だったんだ」
「それって息子さんに渡してたあのケースの事ですか?いったいなんなんです、アレ?」
弟子もやはりと言うかべきか。父と同類らしく、興味で目を輝かせて父を見つめている。
「アレか?アレはな」
父は不敵に笑って答えた。
「"蜂の王"さ」
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僕は父と別れた後、空港でタクシーを捕まえてそのまま家まで帰る。
予定だった。
だが僕はタクシーで家の前まで乗り付ける事はなく、家から徒歩で20分ほど離れた商店街でタクシーを降りた。
別にタクシー代をケチろうとか、そんな事ではない。
それは僕が空港でタクシーを捕まえてから数分ほどたった時まで遡る。
僕がタクシーに乗り込み車窓から外を眺めていると、突然 携帯にメールが来た。
差出人は近所の商店街で個人経営の本屋をやっている顔馴染みの中年店主で、メールの内容は予約していた本が届いたと言うモノだった。
彼の店は小さく、店内にはそれほどの冊数は置かれていないのだが。
百貨店の本屋にも置いていないようなニッチな本を取り扱っているため、少ないながらもある程度の固定客の確保に成功しているのだ。
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