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それで僕がこの店で予約した本は、やはり父と僕の共通の趣味になるモノ。
つまり、昆虫図鑑だ。
父は趣味をそのまま仕事にしちゃった人で、そんな父の姿を見て育った僕もまた虫が好きになった。
そして今回 僕が注文した図鑑と言うのが、その名も:『大人の昆虫図鑑 マニアック』。
その道のプロ達がいらない程の情熱を爆発させた本で、専門用語・業界用語が飛び回る読み手に対する配慮があるのかと問いただしたくなる出来になっており。
書き手の文章力よりも読み手の理解力が求められる、もはや売る気皆無の問題作なのだ。
しかも広辞苑のように分厚い本が上下巻の二冊、それに専門用語などを解説した小冊子まで付属しているというのだから。
紙束とは言えその重量はそれなりのモノだ。
それでまぁ、購入した本の解説も終わり。僕は片手に手錠付きのアタッシュケース 片手にデカイ紙袋と言う姿で家路につく事となった。
徒歩で二十分弱、正直 たいした距離ではないと思っていたのだが。提げている荷物が考えていたよりも重く、肩がすっぽ抜けてしまいそうだ。
「くそ、徒歩二十分を嘗めてた」
このくらい大丈夫だろうと高をくくってタクシー帰すんじゃなかった。
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