21人が本棚に入れています
本棚に追加
この場合、道を教えてあげればいいんだろうが。
正直、学校以外では引きこもり勝ちで休日は家でネットサーフィンしているので。近所付き合い少なめな自分としては、あまり案内できる気がしない。
よし、いっそスルーしてしまう方向で。
そう心に決めて、橋を中心に迷子している人間を無視して歩き去る事を決めた。
再び橋の中程に戻って来てスマホとのにらみ合いを始めた横を通りすぎる。
大きめの帽子を深く被って顔は見えないが、身長や細身でありながら膨らんでいる胸部。服装で男女の区別がつきにくいが、おそらくは女の子だろう。
困ってますオーラをだして(るように見えるだけ)、一心不乱にスマホを睨んでこちらに気づかない。
さっさと家に飛び込んでしまおう。どうせ僕が行っても二重遭難の未来しか見えてこない。
彼女をかわして橋を渡りきる。よし、これで後は少し歩いて玄関の扉を開くだけ。
彼女の事は気の毒な気がするが、僕に出来る事はおそらくないだろう。
せいぜい家に帰って彼女が無事に目的地に到着できる事を何かに祈るくらいだ。
そう自身を納得させて歩を進めようとした時。
「う、うぅぅ………」
今にも泣き出してしまいそうな声が後ろから微かに聞こえてきた。
いや、無理だろ。ここで僕が声をかけたって事態が好転するとは思えない。
無視だ、無視無視。
最初のコメントを投稿しよう!