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「な……なら、それ…が…教授…が……言って……いた」
そう言った瞬間、帽子の下に隠れているハズの彼女の目がギラリと光ったような気がした。
「見せ……て!」
「ちょ!待っ!」
身の危険を感じて反射的に逃げようとしたが、時すでに遅し。
彼女はすでにケースを両手でガッチリと掴まえていたのだから。
さらに彼女はその細腕からは想像できないほど強い力で奪い取ろうとしてくるので、思わず手を離してしまったが。
ケースと腕が手錠で繋がれているので、当然 離れない。
「あの、少し見せてくれればいいので!先っぽだけでいいので!」
彼女はまだ僕が離していないと勘違いをしているのか。訳のわからない事を言っているが、いちいちツッコミを入れている余裕はない。
「ちょっと!落ち着いて!」
声をかけるが彼女が止まる様子はない。むしろ、さらにエスカレートしていっている。
奪い取ろうと半ば暴れるようにケースを振り回し、ケースに繋がれている僕もまた右へ左へ振り回される。
「なぁ!?」
そして、当然 横腹に衝撃が走ったと思った時にはもう遅かった。
僕の体はもうすでに欄干を飛び越えて空中へと踊り出ていた。
「う、うわあああああああああ!!」
全身を襲う浮遊感に思考が混乱する。
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