カミキリ虫

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見れば手と足を()して4つの拘束具がついてる、が。 一瞬、"そんな事"は頭から吹き飛んだ。 「なんだ………これ?」 繋がれている腕、それは普段 目にする自身の腕ではなかった。 腕だけではない。それは反対の腕も両足も体も、視界に入る全ての体の部位が違うのだ。 それは黒よりの灰色の皮膚をして……いや、これを皮膚と呼ぶのかすらわからない。 何故ならこの体はまるで薄い板を張り合わせて、人の形にしたような(いびつ)な造形をしているのだから。 一瞬 プラスチックか何かで作られているのではないかと思ったが、指先を擦り合わせた感触は違った。 硬質(こうしつ)な見た目ではあるものの、同時に生物的な弾力(だんりょく)も備えている。 ニュアンス的には蛇や魚の(うろこ)に近いだろうか? だが 今のこの体を形作っているモノは、鱗というよりも装甲板(そうこうばん)のようだ。 これではまるで 「昆虫の甲殻(こうかく)みたいだ……」 思わず口から漏れだした言葉に答えるモノはいない。 その時だった。 バタンッと勢いよく扉が開かれて、部屋の中に何者かが入って来たのは。 咄嗟(とっさ)に扉の方を見たが、暗くて顔は見えない。
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