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その姿は正しくカミキリ虫だった。
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それからの毎日は地獄だった。
気を失って目覚めた時。アレは全て夢だったのではなかったのか、と願いはした。
目を覚ましたら自分の部屋の天井があって、時計と睨み合いながら朝ご飯を半ば流し込みながら玄関を飛び出していく。そんなどこにでもある日常と言う名の現実。
だが、現実は理解したくない方の方だった。
目に見えるのは気を失う前に見た見覚えのない天井。手足は今もまだ鎖の拘束具で固定され、固定された身体は"そう言う素材"の板を張り合わせて作ったような歪な人形。
カミキリ虫のままだった。
そしてあの白髪の男が扉を開けて入って来る。
「√∮∑∝⊥∠」
おはよう、とでも言っているのだろうか?
相変わらず何を言っているのかわからないし、あの寒気がする嘲笑的な笑みもそのままだ。
どうせ言葉は通じないのだからと無視していたが、男はそれに対して何を思う訳でも無いらしく。
むしろ返答をしないこちらを無視して一人 ベラベラと話 続けている。
そうして一通り話終えると、指を鳴らして合図を出した。
するとあの鉄鎧の怪物がノシノシと部屋に入ってきた。
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