異世界

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この目眩(めまい)がするような人混みからたった1人を探しださなければならないかと思うと、急激に心が(しお)れてくる。 その時だった。 「おーーい」 野太い男の声が聞こえてそちらに振り向くと、片手を上げてこちらに近づいてくる人影が見えた。 「父さん!」 その人影の正体に気がつくと、こっちも手を振って答えた。 「おぉ、健太郎。久しぶりだな、少し見ない間にまた背が伸びたんじゃないか?」 近づいてきた人影の正体、父はそう言いながら太い腕で頭を潰しそうな勢いでグシャグシャとなで回す。 「父さんも相変わらずで!」 潰しにかかっているとしか思えない父の腕をどうにか振り払って、相も変わらない父の顔を見返す。 父は日本人の平均的な身長よりやや高いくらいの身長しかないが、鍛えられた(たくま)しい体のせいで数字の印象よりも大きく見える。 それに加えて無精髭(ぶしょうひげ)と手入れもろくにしていないバサついた髪のお(かげ)で、正直な話 戦場帰りの傭兵にしかみえない。 しかもそんな男がスーツなんて着ているものだから、違和感しかない。 見てみてくれ、あの胸筋を。スーツの前がパツンパツンで今にもボタンが飛びそうだ。
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