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「お前も変わらず元気なようで、けっこうけっこう」
父さんはガハハとどっかの大王みたいに笑いながら肩をバシバシと叩いてくる。
むこうとしては軽いスキンシップのつもりなんだろうが、正直かなり痛い。
「それで父さん、荷物は?」
僕は腕で父さんの手を遮りながら、本題へシフトすべく話題を変えた。
「んぅ?お前は父さんとの再開より、荷物の方が大切なのか?
父さん、さびしいぞぉ‥‥」
いい年したオッサンの拗ねた仕草など誰得だよ。
「はいはい、話したい事なら家に帰ってからいくらでも聞くから。速くその荷物をこっちに貰えないかな、今日は大切なお弟子さんの授賞式なんでしょ?」
そう、今日はこれから父の研究室にいる生徒(父は弟子と呼んでいるが)の論文が賞をとったとかの授賞式に参加する為に帰国したのだ。
「あぁ、はいはい、わかってるよ。ほら」
父はそう言うと渋々と手に持っていた小ぶりのアタッシュケースを差し出してきた。
そしてそれを受け取ろうと手を伸ばした、その時。
ガチャン
「はっ?」
突然、父が僕の手を掴んで"手錠"を掛けた。
「と、父さん。これは?」
恐る恐る父の顔に視線を向けると、そこには何故かイタズラ小僧のような満面の笑みの父の顔があった。
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