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第4回心の処方箋 -初診-①
「この前ざっくりと話は聞いたけど、詳しく聞いていっていいかな。まずどんな子供時代を過ごして来たか教えてくれる?思いついた事、何でもいいから。」
子供時代…小学生くらいからでいいのだろうか。
「えっと、小学生の頃は習い事をたくさんしていました。保育園の年中の時からピアノと習字を、小4の時にミニバスケットボールを始めて、小6の時に学習塾に入りました。」
そうだ、私は子供の頃習い事をたくさんしていた。
小6の時には、
月曜日:ミニバスケットボール
火曜日:ピアノ
水曜日:ミニバスケットボール、学習塾
木曜日:特になし
金曜日:ミニバスケットボール
土曜日:習字、学習塾
日曜日:たまにミニバスケットボールの大会
という1週間を過ごしていた。
運動神経が良く足が速かったため、短距離走の大会に出た事もあった。周りはスポーツクラブの選手ばかりだったせいか、ダントツでビリだったが。
習い事はスポーツ以外、6歳年上の姉の影響で始めた。一応自分からやりたいと言い出したということになっている。
「そういえば姉が…」
ふと思い出した。寧ろ今まで何故忘れる事ができていたのか。
「私が小学校低学年の時、姉は中学生で…後々知ったんですけど、中学でイジメにあっていたそうなんです。それで家では私に当たり散らすようになって。まぁ殴られたりはなかったと思いますけど、子供心に理不尽な事を言われたり、やらされたりしていたと思います。ある程度は妹の宿命かもですけど、その範疇を超えていたと思います。
親も学校に呼び出されて、イジメの事を知っていたはずなんですが、そのせいなのか、姉が私に辛くあたっても助けてくれませんでした。」
あぁそういえばそうだった。
低学年の頃は習い事も少なかったし、友達を連れて遊びに帰るとうるさいと言って怒られて追い出されたり、物を取ってくるようにとパシリにされたり…。
ピアノの鍵盤に八つ当たりしている事なんかもあった。
「でも姉とは、今では普通に話せるんです。」
真っ直ぐ私の目を見て相づちを打つ吉良さんに対して、私は時々目をそらした。
「妹の宿命っていうのは大変だろうけど確かにあるね、分かるよ。でも、辛かったね…。」
そう言われて、心臓のあたりがどくん、と1度動いた気がする。
吉良さんは相づちを打つことはあっても、感想を述べる事はしないと思っていたからだ。
ましてや「辛かったね」、だなんて。
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