第1回心の処方箋 -カウンセリングルーム-

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第1回心の処方箋 -カウンセリングルーム-

メンタルクリニックで診察を受けたらうつ病だった。 まぁそんな事は診察を受けずとも自覚があったけれど、脳波検査の結果に加え、血液検査で貧血だの甲状腺に少し異常があるだの、散々な結果にさすがに驚いた。 だが同時に「これで私は病人なのだという事を両親に対して胸を張って言える」と自信が付いてしまった。そしてそれは今の私にとって都合の良い状態だった。 表情に出さず、心でほくそえむ事すらした。 それみたことか!と。 クリニックの医師はすぐに投薬治療の他にカウンセラーによるカウンセリングを薦めてきた。 今までクリニックは2回ほど転院してきたが、カウンセリングは受けた事はなかった。 「僕のよく知ってるカウンセリングルームで、紹介状はなくても僕の名前出せばいいから。」 と、医師はとにかくカウンセリングを受けるように言ってきた。 けれど、本来カウンセリングを受けるべき対象は私ではないと感じていた。 -病気は私だけなのか?本当に? しかし、まず投薬治療だけでは足りないという事態になっている事に満足感を覚えた。 次に興味本位もあって、私はカウンセリングを受けてみる事にした。 -カウンセリングを受けているなんて、それっぽいでしょ。 医師の薦めるカウンセリングルームのホームページは胡散臭さというか宗教染みた感じというか、あまり良い印象を受けず、カウンセリングルームは他を自分で探す事にした。 そして見つけたのが、交通の便が良いとは言えない、民家に紛れてわかりにくい、初回無料とかかれた貸家の2階部分にあるカウンセリングルームだった。 外観はそこそこきれいにしてあるが、青を基調にした看板が出ているだけで、その看板にも「カウンセリングルーム~心の相談受け付けます~」と電話番号が書いてあるだけで、何というカウンセリングルームなのかすらわからない。 私の実家からでは交通の便の悪い役所へ行った帰り道、バスの路線から外れて途中まで歩こうと思ったところ偶然見つけたのだが、スマホで探した時は見つからなかった。 カウンセリングルームの初回は金額が高く設定されている事が多い中で初回無料というのは怪しいとは思ったが、私はカウンセリングルームを探していただけで悪くない。 騙されたりトラブルが起こっても「病人」をいつも一人で外に平気で放り出す両親が悪いのだ、などと思い、私はそのカウンセリングルームのインターホンを押していた。
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