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なんだか話がこんがらがってきてしまった。死神社会は企業か何かなのだろうか?
それに、死にたいと願っている私が何故ここにいるんだろう。
吉良さんを死神として信じるなら、吉良さんは私が望む世界へ導いてくれると言った。でも命のやり取りはしないと今言っていた。
一体どういう状況なんだろう…。
「凛さんはね」
吉良さんは一呼吸おいてこう言った。
「要件を満たした特別な存在なんだ。だから僕のカウンセリングを受けるつもりがあるなら、お金はいらない、僕の仕事を少し手伝ってもらいたい。それから、君の望む世界へ必ず導いてあげる。」
私の望む世界は今は死の世界だ。
さっき恋人に振られた腹いせに自殺した人の話が出たが、それは私にも同じ事が言える。
私は私が死んだ時に、親がどうするか知りたいのだ。泣き叫ぶのか、世間体を気にして自殺をひた隠しにするか。
「じゃあ、カウンセリングを受けても私がどうしても死にたいと言ったら…?」
「君には今選択肢が二つある。生きるか、死ぬか。まぁ誰にでもこの二つの選択肢は権利として有るんだけどね、僕の目の前には基本的にはまだ生き続ける人しか来ないから、凛さんは本当に特例なんだ。僕のカウンセリングを受けてもずっと変わらなかったら、そうだなぁ、それはカウンセラーとして致命的な気がするんだけど…」
吉良さんは少し躊躇ったあと、こう続けた。
その時の無感情で冷たい表情に私はゾッとした。
「覚えておいて。僕は職権で、人を殺す事ができる。」
それが初めての、死神らしい振る舞いだった。
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