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第3回心の処方箋 -初診予約-
夜、私はオンラインゲーム仲間に電話連絡をしていた。
仲間の中でも人望が厚く、私の所属するギルドのマスターを務める人で、ゲーム内でも有名人なので、インターネットの掲示板で良くも悪くも話題になる人物だった。
マスターを務めるだけあって彼は面倒見が良く、私の話を親身になって聞いてくれた。
私は買い物依存症で親に借金がある事以外は全て彼に話した。
うつ病と診断された事、そのため障害者手帳を申請している事、カウンセリングも受けている事、家族が不仲な事、家族にインターネットとパソコンを使えない状態にされてしまった事etc.…。
そして肝心の貸し借りについては、すぐには無理でも必ず返す意思があるので、それを貸主に伝えてほしいと頼んだ。
彼は具体的に誰から何を借りているのか私に聞くと、パソコン上にメモを残していた様子だった。
そして有り難いことに、必ず伝えると約束してくれた。
後日わかった事だが、マスターは私との約束を違える事無く実行してくれた。
私を攻撃していたあの子は、「凛が急にログインしなくなって何の音沙汰もないから、みんな凛のこと借りパク確信犯だと思ってるよ。ギルド内に凛の居場所はもうないし、大騒ぎになってるよ。」と私に言っていたのだか、マスターが事実確認を行った上でギルドチャットのログを調べた結果そんな痕跡はなく、騒ぎ立てようとしていたのはあの子一人だった事がわかった。
私とあの子は数年来の付き合いだったが、それが一瞬で崩れ去った気がした。
今回は私に落ち度があるとはいえ、この1週間近くずっと責められ続け、それに対してひたすら謝罪を続け、じっと耐えてきたのに。
あの子が、皆が私を責めない事を面白くないと思っていたのは分かっていたが、こんな事実が飛び出してくるなんて、思いもよらなかった。
あの子にも返さなきゃならない物があるが、連絡方法はLINEでなくとも良いし、受け渡しも別の人にお願いしよう、共通の友達ならマスター以外にもいる。
「LINE、ブロックして。」
あの時の吉良さんの言葉がふと蘇る。
確かにそうすれば、こんな思いはしなくて済んだかもしれない。
私はあの子のLINEを、ブロックではなく削除した。
最後に言いたい事も無かったので何も言わずに、「あの子」との関係は終わった。
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