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翌日の午前、私の携帯に吉良さんから連絡があった。
「急で悪いんだけど、もし今日の午後時間があったらカウンセリングルームに来て貰えないかな?」
…携帯の番号教えたっけ…。
仕事もしていない私には時間は十分にあった。
ただ気分が悪ければ1日部屋に籠もるのが日常だったけれど。
「じゃあ、これ読んでもらってサインしてもらえるかな。」
吉良さんは一枚の紙とペンを差し出した。
「凛さんの個人情報の取り扱いについての同意書だよ。ここは一応合法的なカウンセリングルームだからね、こういうのが必要なんだ。」
合法的かもしれないけど人外の場合どうなるんだろう…。
そんな事を思いながら書類に目を通した。
なるほど、カウンセリングで得た情報の中に犯罪を匂わせるものがあったら容赦なく警察に通報されるし、病状の悪化が著しい場合はカウンセリングの中断なんかもあるという事らしい。
「そういえば、死神のお仕事のお手伝いの契約書みたいのはないんですか?」
私はサインした書類を渡しながら言った。
「ありがとう。契約書?そういうのは特にないよ。口約束で十分だよ。でもそうだなぁ…君みたいな子は珍しいから、他の死神に取られちゃうと僕としては面白くないかな。まぁ1週間に1度来てくれれば大丈夫、カウンセリングのペースとしてもそうだし、僕の匂いも付いてるだろうしね。」
匂いって…死神は犬や猫みたいにマーキングする習性でもあるんだろうか。
そもそも今はお茶の香りくらいしかしないのだけど。
「仕事を頼むのは、凛さんの状態がもう少し良くなってからかな。まだゆっくり話も聞いていないし、週に1度ここに来てくれれば構わないよ。毎週水曜日の午後でもいいかな?」
毎週水曜日は午前中に病院があって、午後にカウンセリングなら一日で用事が済む。
「わかりました。時間は何時ですか?」
「15時でどうかな、多少前後しても大丈夫だよ。」
病院が終わるのが大体11時半だから、途中食事を摂っても大分時間が空いてしまうけれど、家に帰るよりはマシかと思うと、大した待ち時間でもないように思えてきた。
家に帰ってもどうせ自室に引き籠もるのだから。
それに、このカウンセリングルームは自宅からでは交通の便が悪すぎる。
病院は1度駅に出るから、そこからならバスの本数もある。
「じゃぁそれでお願いします。」
私がそう答えると、「良かった」と吉良さんは答えた。
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