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「大学生の時はとにかく自由で、快適でした。オンラインゲームにはまったのも大学の時ですけどね。」
そういえばLINEで攻撃してきた子とは縁をきりましたよ、と吉良さんに報告した。
「そう、良く出来たね。それからはオンラインゲームはやっていないの?」
「やれる環境じゃないですし、親しい人がある程度話をまとめてくれたからしばらくはログインしなくても大丈夫です。」
「僕はそのまま辞めてしまってもいいと思うけどね。」
と吉良さんは静かに言った。
それじゃ本当に借りパクになってしまいますよ!と私が露骨に表情に出すと、吉良さんからこんな提案が出た。
「一つ、おまじないをしようか。」
吉良さんが突然おまじないと言うので、最初は何を言い出すのかと思ったが、ふざけている様子などないので、従う事にした。
「目を閉じて。」
私は言われた通りに目を閉じた。
「今から僕が言うことをマネして言ってね。」
できるだけリラックスしてね、と吉良さんは付け加えた。
「私はあなたとの関係を完全に手放します。」
-私はあなたとの関係を完全に手放します。-
「私はあなたとの関係を手放し、あなたの幸せを祈ります。」
-私はあなたとの関係を手放し、あなたの幸せを祈ります。-
「私はあなたを心から、素晴らしい所へと手放します。」
-私はあなたを心から、素晴らしい所へと手放します。 -
「息を吸って、ゆっくり吐いて。」
「もう一度、息を吸って、ゆっくり吐いて。」
私は言われた通りに繰り返した。
「目、開けていいよ。ゆっくりね。」
私がゆっくり目を開けると、微笑んだ吉良さんと目が合った。「はい、お終い。」と吉良さんは言った。
「言葉に出す事は良い事だよ、ノートに書くのでも良い。LINEの子の事で気分が落ち込む事があったら、今の言葉を思い出して、言ってみてごらん。」
そうなんだ、と思いつつ、この人は本当に死神らしくないと心の中で笑ってしまった。
死神におまじないなんてそうそうかけて貰えるものじゃない、大事にしよう、と私は先程のおまじないをもう一度頭の中で繰り返していた。
この際「呪い」の方でも構わないや、なんて思っていると、吉良さんは私を見て優しく微笑んだ。
私が無意識で微笑んでいたからだ。
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