第6回心の処方箋 -初診-③

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彼の家族に会いに行った時、私はそれはそれは歓迎された。 「遠い所を申し訳ない。」とお茶を頂いた。 私の誕生日には彼のお母さんの趣味だというブリザードフラワーのアレンジメントが届き、特に何かの日というわけでもなく、アクセサリーを頂いたりした。 多忙で直接会う事ができなかった彼のお父さんからは昼間の東京湾クルーズをプレゼントされ、彼と二人で初めてのクルーズと、船内でのティータイムを楽しませてもらった。 また同じ日に隅田川の花火大会があり、チケットを持っていないと入れないという特別な場所へコネで入れてもらい、人混みを気にする事なく花火を楽しむ事ができた。 ところが母は、 「何それ。まるで家族ぐるみで逃がさんとしてるみたいじゃない。」 と言い放った。 そういえば、彼と初めてペアリングを買った時、 「お母さん見て、綺麗な指輪でしょ。これダイヤモンド使ってるんだって!人生初ダイヤ!」 と私がはしゃいでいると、 「そんな屑ダイヤ。」 とピシャリと言った事もあった。 一体何が気に入らないのか、母の態度はいつまでたっても変わらなかった。 送られてくるブリザードフラワーはセンスが悪い、相変わらず家族ぐるみで気持ち悪い、と暴言は続いた。 「別れよう。」 そう言われても、私は驚かなかった。寧ろ良くここまで数々の無礼に耐えてくれたと、私は彼に感謝の言葉を述べたいくらいだった。 「凛の事は好きだよ。けどご家族が…。」 と、彼は申し訳なさそうに言った。 彼は私の家に来る度に邪険にされ、彼は毎回「アウェイすぎる…。」と言って東京に帰っていた。 彼の労力はことごとく無駄に終わり、今思うと相当なストレスだったに違いない。 本来結婚とは自由なものだが、自由と言えど家族間の関係は必須、勝手に決められるものではなかった。 後日、彼のマンションの住所から段ボールが届き、そこには東京でのデートをした際にゲームセンターで取った大量のぬいぐるみと、少しの私の私物が入っていた。 -こんなにたくさんのぬいぐるみ、今更どうしろっていうの。 私はその場で泣き崩れた。 彼との楽しかった日々、二人の将来の夢の話。 これからもずっと彼と一緒にいたかったと願えば願うほど、思い出が溢れてきて涙が止まらなかった。 私達はもう友達に戻るにはお互いの関係が深すぎたし、二度と会う事はできないだろう。
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